毎朝、クローゼットを開けてその日の気分で服を選ぶようにリビングに飾る花を選んでもらいたい。
そんな思いをこめて私たちはFLOWER DRESSという名前をつけました。
喜びのとき、幸福なときはもちろん、悲しいときやつらいときも、FLOWER DRESSの花たちがそばにあってほしい。
たくさんの人を彩り、そして癒す花でありたい…私たちは岩手県大槌町の里山で1本1本大切にトルコキキョウを育てています。
トルコキキョウの花言葉は「永遠の愛」「希望」「優美」…たくさんの花言葉を持つ花として知られています。
時にはバラのようにあでやかで華やかに咲き誇り、時には清楚な表情も見せるトルコキキョウ。白、ピンク、紫などさまざまな色があり、花の形もじつに多様です。
私たちが山あいの金沢地区で栽培するトルコキキョウは約40類。ウェディングから仏前まで人の生涯に寄り添えるトルコキキョウの持ち味を生かすため、バラエティに富んだ個性豊かな花を揃えています。
「大槌町」と聞くと海のイメージが強いかもしれませんが、トルコキキョウを育てている金沢地区は、三陸の沿岸部から15kmほどのところにある山あいの小さな集落です。その名の通り中世から金山で栄えたと言われています。
古くから人々が暮らしてきたこの地区は、周囲を山に囲まれ、冷涼な気候と昼夜の寒暖差が特徴です。山が近いからこそ、トルコキキョウを育てているビニールハウスのまわりの小さな川や沢も豊かな水をたたえています。
今でこそこの土地に愛着を持っていますが、10代のころは都会へのあこがれ、キラキラしたもの、きれいなものへのあこがれでいっぱいでした。きれいなものにかかわる仕事がしたい、とアパレルの道に進み、「アパレルは天職だ」と思うまでになった矢先、大槌町が東日本大震災に襲われて約1年経ったころに母が急逝。専業農家だった父を手伝うために、金沢に戻る決心をしました。そのころはアパレルの世界への未練もありました。でも、やるからには誰にも負けない自分の農業をやりたい、そんな思いでの帰郷でした。
アパレルで経験を積んだ自分だからこそできる農業とはなんだろう…。そう考えるうちに浮かんだのが花です。亡くなった母も好んでつくっていたトルコキキョウの可憐な姿が思い浮かびました。花なら見る人に「きれい」を届けることができる。たくさん種類のあるトルコキキョウなら、その日の気分や目的によって花を選び、イメージに合わせた空間にドレスアップできる。トルコキキョウなら私にしかできない農業ができると考えています。
いつかはたくさんのトルコキキョウのなかでファッションショーを開いてみたいという夢もあります。アパレルにいたかつての自分と、農業の分野で成功した未来の自分を結びつけて、私にしかできないショーをやってみたい。小さな集落にいても自分次第で夢も希望も持つことができます。可能性はつくれるのだということを若い人たちやこれからを担う子どもたちにも伝えられたらと思っています。